量子力学、統計力学、熱力学における天才物理学者たちの神学的な形象について

スポンサーリンク

Accel Brain; Console×

派生問題:前期量子力学における量子論の意味論

古典力学観察してきたのは、日常的に観察される物体のマクロな物理現象に過ぎない。19世紀以降、ミクロな粒子が物理学の研究対象となると、古典力学的な観察では説明の付かない事象が観測されることになる。このマクロミクロ区別が導入されることによって、もはや古典力学に対する期待外れを隠蔽し続けることができなくなった。ボルツマンらによる熱力学の功績が認知的に期待されたのは、専らミクロな事象とマクロな事象との間の接続可能性との関連からである。

古典力学では長らく、エネルギーは連続的であると想定されてきた。しかし1900年にマックス・プランクは、黒体放射の観測結果から、エネルギーが不連続な値を取り得ることを示した。不連続なエネルギーの単位は、光子が有するエネルギー振動数の比例定数hとして、$$h = 6.62607004 ☓ 10^{-34} m2 kg / s$$となる。このhは「プランク定数(Planck constant)」と呼ばれている。

1905年になると、アルバート・アインシュタインが、光電効果現象を説明するためには、古典電磁気学においては電磁「波」として想定されていた光を、$$E = hv$$のエネルギーを有する「粒子」または「光子」として記述しなければならないことを示している。ここで、vは光を波と考えた場合の振動数を意味する。しかし光の回析や干渉は、波動論的には説明が付いても、粒子説では説明の付かない。古典力学における光の観察は、粒子性と波動性の矛盾を派生させていることになる。

これに付随してニールス・ボーアは、1913年に、原子中の電子が原子核の周囲で軌道を描きながら保持するエネルギーを求めた。こうした電子が一定のエネルギーを保持して軌道を描いているのは、そもそも不連続的なエネルギー存在するためである。その不連続的なエネルギーを$$E_1, E_2, …, E_i, …, E_j$$とするなら、j番目の準位の電子がi番目の準位に移行する時、$$E_i – E_j = hv$$が成り立つ。ここで、j番目よりもi番目のエネルギーの方が高い場合、hvの振動数に該当する光の吸収が伴っている。逆にj番目のエネルギーの方が高い場合は、hvの振動数に該当する光の放出が伴っている。

アインシュタインやボーアの観測は、それまで波として想定されていた光に粒子性を認める観察となっている。逆に、電子のように、それまで粒子として想定されていた対象に波動性を見出したのが、ド・ブロイである。1924年に提唱されたド・ブロイ説によれば、一般的に運動している物体には粒子性と波動性の双方が伴っている。そして、粒子としての運動量pと波としての波長λとの間には、次のような関係がある。

$$p = \frac{h}{\lambda}$$

これを特に「ド・ブロイの関係(de broglie relationship)」という。p = mvとするなら、質量mが大きいマクロな物体においては、λが無視できるほど小さくなるため、波動性は顕在化しない。mが微小のミクロな粒子となる場合には、波動性は逆に顕在化する。ヴェルナー・カール・ハイゼンベルクの「不確定性関係(Unschärferelation)」も、この粒子と波動の二重性を説明している。粒子は波動性を兼ね備えているからこそ、その位置と運動量を同時に正確に測定することができないのである。

ハイゼンベルクが定式化した「不確定性関係(Unbestimmtheitsrelationen; Uncertainty relations)」、あるいは俗に言う「不確定性原理(Uncertainty principle)」は、粒子の位置と速度の両方を同時に完全な正確性を以って決定することが不可能であることを示している。無論これらの量のいずれか一方を必要に応じて正確に測定することは可能である。しかし、一方を正確にすればするほど、他方の不確定度は高まる。より厳密に言えば、座標$$x$$とそれに共役な運動量$$P_x$$は、同時にその不確定性を任意に小さくした値$$x’$$と$$P_x’$$を取ることができない。これらの不確定性をそれぞれ$$\Delta x$$と$$\Delta P_x$$と表すならば、次の不等式が成立する。

$$\Delta x \Delta P_x \geqq \frac{h}{4 \pi}$$

ここでいうhはプランク定数(Planck constant)に他ならない。すなわち、

$$h = 6.62607004 × 10^{-34} m^2 kg / s$$となる。この値は非常に小さいために、我々の多くの日常生活の経験には何の影響も及ぼさないように思える。例えばミサイルの位置と速度に対する観測においては、如何にサイバネティクス的に緻密な弾道計算においても、全く問題とはならない。

不確定性関係は、正準共役関係にある一対の力学変数に対してのみ適用される。互いに相補的に結び付けられていない変数間ではこの制約は成立しないということである。

この不確定性関係において特筆すべきなのは、ある系を観測する際には、観測装置とその系との間でエネルギー運動量を交換する必要があるということである。この交換は、対象それ自体の観測直前の性質を変異させる。その結果、これらの性質の測定の正確性は喪失するのである。例えば顕微鏡による観測では、粒子を観測するために、対象に光子を当てることになる。そのために対象の運動量は不確定になる。

問題解決策:シュレディンガー方程式

ハイゼンベルクは1925年、このミクロな粒子の運動を記述するために、「行列力学(Matrix mechanics)」を創始している。時を同じくしてエルヴィン・シュレーディンガーは1926年に、粒子性を伴わせた波の存在に関するド・ブロイ説を展開することで、波の運動を記述する「波動方程式(Wave equation)」を提唱している。その後の観察により、ハイゼンベルクの行列力学とシュレディンガーの波動方程式は同一の物理現象に対する異なる記述形式であることが証明された。

行列力学

意味論的に言えば、行列力学と波動方程式の差異は、ミクロな物理現象が突き付けた古典力学に対する期待外れに対して、如何にして認知的な期待構造化するのかという二者の観点の差異として表れている。ハイゼンベルクの行列力学の観点は、観測可能性と観測不可能性区別から出発している。電子の位置や周期などのような観測不可能な量については、観測しようと期待するのは懸命ではない。その代わりとして、彼は観測可能な量にのみ焦点を当てることで、古典力学との整合性を担保した理論量子力学を創始することの方がより筋が通っているという。

それ故にハイゼンベルクの記述は、それまで古典力学で観測されていた物理量に向けられる。ハイゼンベルクは位置と運動量を行列として再記述するのみならず、順番が異なるだけの2つの値の積は互いに等価であるという前提を覆す。そしてその差異から物理量の情報を抽出することで、彼は複雑な行列計算展開した。

波動力学

一方、シュレディンガーの波動方程式は、古典力学から演繹できる発想ではない。しかし多くの仮定の導入を必要としている行列力学に比して、波動力学の原理を成しているのは、波動方程式のみである。抽象化すれば、波動力学問題解決策は、観測の対象となる物理現象の位置と運動量のハミルトン関数を直交座標上で記述した上で、量子化を施すところから始まる。量子化とは以下のように、運動量を微分演算子として再記述することを指す。ここで重要となるのはシュレディンガーの波動方程式それ自体ではなく、量子化という手続きとハミルトニアンの関連に他ならない。シュレディンガー方程式機能は、この量子化の手続きとハミルトン関数アルゴリズムによって左右される。

時間に依存しないポテンシャルV(x)で運動する質量mの一個の粒子のハミルトン関数として記述すると、シュレディンガーの波動方程式は以下のようになる。

$$ih\frac{\partial}{\partial t}\psi(x, t) = H\psi(x, t) = [-\frac{h^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x)]\psi(x, t)$$

マクロ事象を扱う古典力学では、粒子のエネルギーは、時間に依存しないV(x)に基づいて保存される。一方、ミクロな事象を扱う量子力学では、時間に依存しない場合の方程式は、波動関数時間依存性を次のように分離することで表現される。

$$\psi(x, t) = f(t)\mu(x)$$

これを上記の波動方程式に代入すると、

$$ih\frac{\partial}{\partial t}f(t)\mu(x) = Hf(t)\mu(x) = [-\frac{h^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x)]f(t)\mu(x)$$

ここで、左辺の時間微分はf(t)にのみ作用する。右辺のxによる微分はμ(x)にのみ作用する。したがって、

$$\mu(x)ih\frac{d}{dt}f(t) = f(t)[-\frac{h^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\mu(x) + V(x)\mu(x)]$$

両辺をf(t)μ(x)で割れば、$$\frac{ih}{f(t)}\frac{d}{dt}f(t) = \frac{1}{\mu(x)}[-\frac{1}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\mu(x) + V(x)\mu(x)]$$

となり、時間tのみの関数となる左辺と位置座標xのみの関数となる右辺を分離することが可能になる。左辺はxには依存せず、右辺はtに依存しない。この両辺が等号で結ばれるということは、両辺はxにもtにも依存しない定数にならざるを得ない。この定数を仮にEと置くなら、

$$\frac{ih}{f(t)}\frac{d}{dt}f(t) = E$$

$$ih\frac{d}{dt}f(t) = Ef(t)$$

積分定数をCとするなら、$$f(t) = Ce^{-\frac{iEt}{h}}$$となる。

一方、$$\frac{1}{\mu(x)}[-\frac{1}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\mu(x) + V(x)\mu(x)] = E$$から、$$-\frac{h^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\mu(x) + V(x)\mu(x) = E\mu(x)$$となる。これがμ(x)に対する「時間に依存しないシュレディンガー方程式(time-independent Schrödinger equation)」と呼ばれる定式である。

ハミルトン関数時間に依存しない場合、波動関数時間依存性はf(t)のみで表現される。一方、ポテンシャルが時間に依存する場合、つまりV(x, t)の場合には、「時間に依存するシュレディンガー方程式(time-dependent Schrödinger equation)」が導入されなければならない。V(x, t)の場合におけるハミルトン関数は、以下のようになる。

$$H = \frac{p^2}{2m} + V(x, t)$$

これをシュレディンガー方程式に適用するなら、$$ih\frac{\partial}{\partial t}\psi(x, t) = H\psi(x, t)$$が得られる。

上記のハミルトン関数は粒子が一個の場合を想定している。これをN個の粒子の場合に一般化するなら、各粒子の質量と運動量を$$m_i$$と\$$p_i$$として、ハミルトン関数は、$$H = \sum_{i=1}^{N}\frac{p_i^2}{2m_i} + V(r_1, r_2, .., r_N, t) \ \ r_i = \{x_i, y_i, z_i\}$$となる。ただしここでのVは、N粒子系のポテンシャルエネルギーとなる。

問題解決策:エネルギー固有関数

波動関数は、量子系を構成する粒子の位置変数と運動量変数の量子確率分布を表す。量子力学の参照問題はこの波動関数を求めることである。だが量子確率分布は、古典力学でも利用されるような確率分布の一種に過ぎない。単に分布の形式が異なるだけだ。ミクロの水準では確率的に変動しているはずの粒子のエネルギーをはじめとする物理量は、マクロの水準では確定的な値を取る。量子力学主題は、この矛盾が如何にして可能になっているのかである。マクロの水準での観測であっても、実際上その粒子の定常状態には微小な「ゆらぎ」が伴っている。粒子がある定常状態から別の定常状態へと移行する時、光の放出や吸収が生じているのである。エネルギー期待値が確定的な値として観測されるのは、この「ゆらぎ」が盲点となる場合である。

粒子のこの定常状態は、単一とは限らない。多くの場合、一つの量子系は複数の定常状態の重ね合わせとして構成されている。定常状態を実現する幾つかの量子的状態を記述する部分集合の各粒子は、その集団のエネルギー期待値に近いエネルギーの状態で振動している。その最中に光が吸収・放出されることによって、ある定常状態から別の定常状態への移行が成り立つ。スペクトルとして観測されるのは、この時に吸収・放出される光である。

電子は各エネルギー準位に対応した軌道を描く訳ではなく、それぞれの平均エネルギー状態間を運動するだけである。軌道そのものが複数個あるのではない。運動の平均エネルギー状態が複数個あるのである。そしてこのエネルギーの分布を規定するのが、波動関数である。電子の位置や運動量は、波動関数に準拠した上で変動する。電子は位置や運動量の分布を変異させる。スペクトル線の放出や吸収の原因となるのは、この平均エネルギーの状態変化である。

古典力学であれ量子力学であれ、系の全エネルギーが常に保存される物理量であるということに変わりは無い。この物理量は恣意的な値を取り得ない。量子力学においては、このエネルギーの取り得る値を「エネルギー固有値(Energy eigenvalue)」と呼ぶ。上述した「時間に依存しないシュレディンガー方程式」の解は、エネルギー固有値とそれに対応する「エネルギー固有関数(Energy eigenfunctions)」に関する重要な性質を指し示している。例えば一次元の長さLの箱の中に一個の自由粒子が存在する場合、箱の長さをx軸方向に取れば、箱の左端をx=0とし、箱の右端をx=Lとして表現できる。自由粒子であるため、箱の中でのポテンシャルVは0である。また、設定上粒子は箱の外には出られないため、箱の外のポテンシャルVは∞である。このポテンシャルは時間に依存しない。したがって、「時間に依存しないシュレディンガー方程式」が導入される。

$$-\frac{h^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\mu(x) + V(x)\mu(x) = E\mu(x)$$より、$$\frac{d^2\mu}{dx^2} + \frac{2m}{h^2}(E – V)\mu = 0$$

ここで、μが箱の境界上で連続であるという条件を仮定するなら、エネルギー固有関数は、

$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\mu_n(x) = 0 \ (x \leq 0, x \geq L)\\
\mu_n(x) = \sqrt{\frac{2}{L}}\sin \frac{n\pi}{L}x \ (0 < x < L) \end{array} \right. \end{eqnarray} (n = 1, 2, ...) $$ として規格化され、エネルギー固有値としては、$$E_n = \frac{\pi^2h^2n^2}{2mL^2} \ (n = 1, 2, …)$$が得られる。粒子のエネルギーは、古典力学の観測結果とは異なり、量子数nの増加と共に不連続的に増大していく。また、最小エネルギーは$$E_1 \neq 0$$であって、有限値を取る。

問題解決策:固有状態と一般状態の区別

量子力学では、エネルギー固有値$$E_i$$は、系のエネルギーの測定値ではない。それは系の可能なエネルギーの測定値である。観測した系のエネルギーを測定した場合、それによって認識可能になるのは、$$E_i$$の一つに過ぎない。言い換えれば、系がエネルギー固有関数によって表現される状態にある場合、そのエネルギーを測定すると、$$E_i$$が測定値の一つとして得られる。この測定による観測が実行された時、系はi番目の固有状態にあると認識される。

したがって、系の固有状態は、観測によって規定される。観測は時間に依存する訳ではない。観測者は任意の時間に観測を実行することができる。これに連動するように、シュレディンガー方程式も、「時間に依存しないシュレディンガー方程式」が用いられる。つまり、$$\hat{H}\psi = E\psi$$を解けば、エネルギー固有値$$E_i$$とその固有関数$$\psi_i (i = 1, 2, …)$$が求められるのである。

一方、これに対して系の一般状態は、「時間に依存するシュレディンガー方程式」を解くことで求められる。つまり系の一般状態は、$$\hat{H}\Psi = \frac{ih\partial \Psi}{\partial t}$$の解となる波動関数$$\Psi(\bf{r}, t)$$によって得られる。ここで、$$\bf{r} = \{r_1, r_2, …, r_n \}$$のn粒子系を表す。

この系の一般状態は、系の固有状態の一次結合によって表現される。

$$\Psi(\bf{r}, t) = \sum_{i}^{}c_i(t)\psi_i(\bf{r})$$

言い換えれば、系の一般状態は系の固有状態の重ね合わせによって成立していることになる。固有状態が既知の場合は、$$\hat{H}\Psi = \frac{ih\partial \Psi}{\partial t}$$から、係数$$c_i(t)$$を算出することで、系の一般状態を規定することが可能になる。そしてこの一般状態にある系に対してエネルギーの測定を実行すれば、測定値となる$$E_i (i=1, 2, …)$$が、$$|c_i(t)|^2 (i=1, 2, …)$$の確率で得られる。一方、もし系が固有状態にある場合には、$$\Psi(\bf{r}, t) = \psi_i(\bf{r})(|c_i(t)|^2=1)$$から、系についてのエネルギーを測定することにより、$$E_i$$が確定的な値として得られる。

スポンサーリンク