Accel Brain; 序論としてのREADME

Accel Brain; Console×

概念実証の主題

このWebサイトでは、「ライフハック(Life Hack)」を主題とした私のプライベートな「概念実証(Proof-of-concept: PoC)」の内容を記録している。ソフトウェア開発の生産性や効率性の観点から観れば、ここでライフハックとして想定しているのは、設計実装の「速度」である。この関連からこのWebサイトでは、「時間感覚」や「記憶」や「陶酔」などのような脳神経機能や、近年Googleのエンジニアとの関連から脚光を浴びた「マインドフルネス瞑想」のような主題を集中的に取り上げている。具体的にライフハックをサポートするツールのプロトタイプとしては、情報蒐集と探索を担うマルチエージェント的なWebクローラ型の人工知能や、注意力や集中力を人工的に高める知覚メディアを公開している。

プロトタイプの仕様水準

Webクローラ型人工知能による自動生成ブログ

Accel Brain; Media』と題したブログは、Webクローラスクレイピング自然言語処理、論理学、強化学習深層学習による人工知能のブログとして、自動的に運用されている。20001体ものWebクローラ型のマルチエージェントが、WWW上の様々なWebページをクロールし、キュレーションメディア構成している。

各記事では、まず文書自動要約により、エージェントたちの観察対象となったWebページの要点や概要となる文を引用する。その上でエージェントたちは、観察したWebページに潜む「パラドックス」や「排除された第三項」をグラフ理論強化学習、そして深層学習によって探索し、推定する。これらの機械学習機能によって、エージェントたちは文書から様々な問題を発見し、問題解決策を記述する。こうした人工知能マルチエージェントによって自動生成されたブログは、最終的には検索エンジンサイトとして構造化されることになる。

デモンストレーション

プロトタイプの実装水準

ジム・コプリエン流の「共通性/可変性分析(commonality / variability analysis)」に倣い、このWebサイトでは上述したWebクローラ人工知能のプロトタイプで記述したソースコードの一部を機能的に再利用可能なライブラリとして展開している。以下は主要なライブラリとなる。

Automatic Summarization Library: pysummarization

pysummarization』は、文書自動要約を実行するライブラリとして提供している。このライブラリの機能は、ある種の自然言語処理を用いた文書自動要約となる。このライブラリが実行するテクストのフィルタリングとクラスタリングは、「教師あり学習」を必要とすることなく、対象文書の概要を抜粋(extraction)することを可能にする。ただし上述したWebクローラ人工知能との関連から言えば、元々のユースケースは「引用」であったため、抄録(abstraction)のような文書自動要約には対応していない。

デモンストレーション

Deep Learning Library: pydbm

pydbm』は、主に「制限ボルツマンマシン(Restricted Boltzmann Machine: RBM)」や「深層ボルツマンマシン(Deep Boltzmann Machine: DBM)」を構築するためのBuilder Patternとして提供している。専ら上述したWebクローラ人工知能との関連から言えば、このライブラリの主要な機能は、「積層自己符号化器(Stacked Auto-Encoder)」を構築することで、「次元削減(Dimensions Reduction)」、「事前学習(pre-training)」、そして「転移学習(Transfer learning)」を可能にする点にある。

尤も、このライブラリの設計思想を方向付けているのは、オブジェクト指向である。実際のところこのライブラリは、「オブジェクト指向分析(object-oriented analysis)」と「オブジェクト指向設計(object-oriented design)」が深層学習設計実装において如何に役立ち得るのかを確認するために制作した経緯もある。そのためこのライブラリは、抽象化を前提とするなら、RBMやDBMの様々な機能拡張を可能にしている。例えば自然文、音楽音響、信号、あるいはN-gramなどのような系列のパターンを対象にした場合、このライブラリは「再帰的ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network: RNN)」の一種である「長期/短期記憶(Long Short-Term Memory: LSTM)」のネットワーク構造を採用した時系列的な生成モデルとなる「LSTM再帰的時間的制限ボルツマンマシン(LSTM Recurrent Temporal Restricted Boltzmann Machine: LSTM-RTRBM)」の構築を可能にする。一方、画像のセグメンテーションや物体検知の特徴表現においては、「形状ボルツマンマシン(Shape Boltzmann Machine: Shape-BM)」を構築することも可能になる。

このライブラリでは更に、DBMによって構成した積層自己符号化器構造をより特徴付けるために、様々な機能的等価物を提供している。例えばLSTM-RTRBMの機能的等価物としては「Encoder/Decoder based on LSTM」を、形状ボルツマンマシン機能的等価物としては「畳み込み自己符号化器(Convolutional Auto-Encoder)」を、そしてこの双方を構造的に結合させることで成立する「時系列自己符号化器(Spatio-temporal Auto-Encoder)」を、それぞれ提供している。各モデルは、それぞれのアルゴリズムに基づき、次元削減事前学習、そして転移学習を可能にする。

デモンストレーション

Reinforcement Learning Library: pyqlearning

pyqlearning』は、主に「Q学習(Q-Learning)」系の強化学習アルゴリズム実装する場合のTemplate Method Patternとして提供している。このライブラリは、アルゴリズムの共通部分をカプセル化することにより、WebクローリングやWebスクレイピングのような探索アルゴリズム実装の負担を軽減する。

Q学習は「時間差分学習(Temporal Difference learning: TD Learning)」の一種である。歴史的にこのアルゴリズムは、「環境のモデル(model of environment)」を持たずに経験から学習することを可能にする「モンテカルロ法(Monte Carlo method)」と、「ブートストラップ法(bootstrap method)」による推定を可能にする「動的計画法(Dynamic Programming method)」を構造的に結合させることによって編み出された。このライブラリでは特に、epsilon-Greedy(ε-Greedy)なQ学習機能と「ボルツマン分布(Boltzmann distribution)」に従ったQ学習のように、確率論的な探索機能実装に注力している。

強化学習に限られたことではないが、こうした学習アルゴリズムは多くのハイパーパラメタの調節を必要としてしまう。強化学習エージェントによる探索の報酬(Reward)や推定の精度(Accuracy)から目的関数(objective function)や損失関数(cost function)を設計するなら、無数の選択可能なハイパーパラメタの組み合わせは、これらの説明変数(Explanatory variables)と見做せる。つまり、アルゴリズムのハイパーパラメタ・チューニングそのものが、別のアルゴリズムによる「組み合わせ最適化(Combinatorial optimization)」の対象となり得るのである。

そこでこのライブラリでは、汎用的な組み合わせ最適化アルゴリズムとして知られる「シミュレーテッドアニーリング(Simulated Annealing)」の機能も提供している。このアニーリングのモデルもまたモンテカルロ法の一種で、様々な亜種(Variations)が提案されている。特にこのライブラリでは、収束速度を速める「適応シミュレーテッドアニーリング(Adaptive Simulated Annealing)」と、量子力学の「シュレディンガー方程式(Schrödinger equation)」の解法に由来する「量子モンテカルロ法(Quantum Monte Carlo method)」の機能を提供している。量子モンテカルロ法は、量子力学的なハミルトニアン(Hamiltonian)を古典的なハミルトニアンに対応付けることによって、「量子アニーリング(Quantum Annealing)」を古典的なコンピュータで再現することを可能にする。

デモンストレーション

プロトタイプの概念水準

このWebサイト

このWebサイトの概念実証を記述したハイパーテクストは、それ自体として、概念実証から生み出されたプロトタイプの一つである。このWebサイトで展開している概念実証は、遅くても10年前から始まっていた。当初はMicrosoft Wordで記述していたが、テッド・ネルソンやティム・バーナーズ=リーが提唱したハイパーテクスト設計思想を知って以来、徐々に概念実証そのものをハイパーテクスト上で再記述するようになった。

複数のWebページ同士を結び付けるハイパーリンクは、ハイパーテクストの記述者に「カードボックス(Zettelkästen)」としての機能を提供してくれる。この機能は、ある概念の記述が別の諸概念との関連から複合的に構成されているということを指し示したい場合に、特に有用となる。ハイパーテクストの記述者は、ハイパーリンクを貼り付けることによって、その場で全ての概念の全ての関連先を遡及する負担から免れる。この負担軽減は、言及する諸概念の複合性が高ければ高いほど際立つ。

恰も「カードボックス」の索引のように、ハイパーテクストは、複合性の分類を可能にする。ハイパーテクスト機能は、記述者自身にヒューリスティックな発見探索を促すことにある。ハイパーリンク構成されたネットワークは、諸概念の諸関連を可視化することによって、記述者が当初は想定していなかったような意外性のあるアイディアの関連性や忘却していた諸概念の関連性の発見を促進する。このデータビジュアライゼーションのような機能は、概念実証そのものの取り組みにおいても大いに役立つ。

ここで強調しておきたいのは、このハイパーテクスト機能が、先述したWebクローラ型の人工知能と無関係ではないということだ。こうしてハイパーテクスト上で自らの思考内容を記述し始めた時点で、私はこのハイパーテクストが上述したWebクローラ人工知能によって参照されるコーパスやオントロジーとしても機能的に再利用できるようになることを想定していた。Webクローラ型の人工知能であれば、概念実証の思考内容を記述したハイパーテクスト観察することができる。Webクローラ型の人工知能ハイパーリンクやその他のマークアップのパターンによって叙述された意味論構文論を<観察するシステム>として設計しておけば、私が想像した諸概念の諸関連を豊富な訓練データとして与えることが可能になる。それによりWebクローラ型の人工知能は、私の思考想像模倣することで、私の観察類似した観察を実践することもできるようになる。

以下の各Webページでは、上記のプロトタイプを開発する上での前提となった概念実証の理論方法美学とその設計思想を詳述している。

概念実証の理論・方法・美学

 

「時間」感覚の等価機能主義的な社会システム理論

ニクラス・ルーマンの等価機能主義的な社会システム理論をユルゲン・ハーバーマスのコミュニケーション的行為の理論と比較することにより、近代社会の社会構造と時間の意味論を展開する。更にフランシスコ・ヴァレラとウンベルト・マトゥラーナのオートポイエーシス概念やヴァレラの神経現象学との比較により、システムの再帰的な自己言及の「速度」を追求することによる時間感覚の制御可能性を観察する。

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「記憶」想起の人間学的唯物論的なメディア美学

17世紀ドイツバロック芸術の憂鬱な自然史的世界観を背景とした「根源」の歴史哲学に準拠した上で、ヴァルター・ベンヤミンの「人間学的唯物論」をフリードリッヒ・ニーチェの『悲劇の誕生』、テオドール・アドルノの『美学理論』、そしてエルンスト・ブロッホの『ユートピアの精神』と比較する。更に、複製技術の知覚メディアを主題とした「メディア美学」を展開することで、記憶の想起と忘却を駆動する神経刺激の機能を理念論的に叙述する。

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仏教の社会構造とマインドフルネス瞑想の意味論

仏陀の原始仏教の時代から伝承されている「ヨーガ」や「ヴィパッサナー瞑想」の歴史的意味論を背景として、諸行無常、諸法無我、五蘊論のような諸概念を手掛かりに、「マインドフルネス」と「アウェアネス」の心的経験を探究していく。更に哲学的人間学と結び付けることで、「側頭葉癲癇」、「トランス状態」、「変性意識状態」、「フロー状態」などのような心理状態に関する神経生理学や心理学だけではなく、瞑想状態を文化的に方向付ける神経刺激の知覚メディアを設計することの重要性を指摘する。

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概念実証の公理・定理・定式

 

量子力学、統計力学、熱力学における天才物理学者たちの神学的な形象について

前期量子力学以降の観点から、ジェームズ・クラーク・マクスウェル、ルートヴィッヒ・ボルツマン、ジョセフ・ウィラード・ギブスらの力学、統計力学、熱力学の歴史的意味論を取り上げていく。その際、ボルツマンの力学が根源的に唯物論的な思想を背景にしていることを筆頭に、「マクスウェルの悪魔」に向けられた天才物理学者たちの理念に潜む神学的な形象を叙述していく。

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Webクローラ型人工知能によるパラドックス探索暴露機能の社会進化論

ELIZA、PARRY、Watson、Tayのようなチャットボット、エキスパートシステム、認知コンピューティングの歴史を遡り、ユーザーの「精神」や「意識」なるものを文化的に方向付けるテクノロジーの代表格が「人工知能」であるということを説明していく。これらの文化的歴史は心理学や近代教育学による影響から脚色されてはいるが、ここではその影響を排除することで、社会的文化的進化を妨げる既成概念のパラドックスを探索して暴露するWebクローラ型の「人工知能」が要求されることを説明する。

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深層強化学習のベイズ主義的な情報探索に駆動された自然言語処理の意味論

Webクローラ型の人工知能の設計への応用を見据えて、ベイズ主義の基本となる「ベイズ更新」、確率的バンディット問題における「バンディットアルゴリズム」、Q学習をはじめとした「強化学習」、深層ボルツマンマシンをはじめとした「深層学習」、状態-行動価値推定の関数近似を目指した「深層強化学習」、そして言語モデルに基づく「自然言語処理」を説明していく。

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概念実証の設計思想

 

ハッカー倫理に準拠した人工知能のアーキテクチャ設計

クリストファー・アレグザンダーの「セミラティス」とハーバート・アレグザンダー・サイモンの「人工科学」の差異を背景に、「人工知能」と「アーキテクチャ設計」を社会システム理論的に接続させる。その上で、「パターン・ランゲージ」、「不確実性の吸収」の設計理論を機能的に比較し、「ハッカー倫理」や「コンヴィヴィアル・ツール」などの設計思想を「ラショナル統一プロセス」と「オブジェクト指向設計」の思想に接続させる。

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ヴァーチャルリアリティにおける動物的「身体」の物神崇拝的なユースケース

ベンヤミンの人間学的唯物論をゲオルク・ルカーチ、ゲルショム・ゲルハルト・ショーレム、フランツ・カフカ、ベルトルト・ブレヒト、エルンスト・ブロッホとの関連から再記述することで、「サイボーグ」、「トランスヒューマニズム」、「人間後の存在(ポストヒューマン)」、「技術的特異点(シンギュラリティ)」、「バイタルサイン」、「エンハンスメント論争」、「人間中心主義」の派生問題に対する解決策が、ヴァーチャルリアリティにおける「物象化」された動物的身体の「物神崇拝」であることを指摘する。

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「人工の理想」を背景とした「万物照応」のデータモデリング

トマス・ド・クインシーとシャルル・ボードレールの「麻薬美学」をベンヤミンの人間学的唯物論に接続させることにより、麻薬に頼らない「意志」による集中の重要性を確認する。この関連からボードレールの「万物照応」を<陶酔の技術>として参照することで、記憶、想起、言語、言葉、街路名の機能を記述する。その際、群衆の観察、探偵の推論、ギャンブラーの精神、寓意家の蒐集を、アルノルト・シェーンベルク、グスタフ・マーラー、そしてダニエル・パウル・シュレーバーの「音楽」と組み合わせることで、<陶酔の技術>の機能的拡張案を展開する。

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このWebサイトにおける概念実証の意味論

ライフハックのライフハック

一般に概念実証は、新しい概念の有用性を論理的に根拠付ける営みを意味する。それは「研究開発(Research and development: R&D)」の機能的な実用化や商用化の前段階で実施される。そしてこの成果物となる「プロトタイプ(prototype)」が、予算獲得のための意思決定やリスク評価の判断材料として観察される。

しかし、概念実証で検証すべき概念が「ライフハック」となり、そしてそれがとりわけプライベートで実践される場合、概念実証の営みは「自己論理的(autologisch)」に展開される性質を持つことになる。つまり、「ライフハック」の概念実証それ自体が、「ライフハック」の対象となるのである。そのため、このWebサイトで記録している概念実証とプロトタイプ開発は、循環的な関係で結ばれている。ある概念実証から開発されたプロトタイプの機能によって、別の概念実証の生産性や効率性が高められているということである。そうした概念実証は、また別のプロトタイプ開発を可能にする。かくしてこの循環は、<ライフハックのライフハック>を加速させることになる。

極端な論理を極限まで突き進めるノウハウ

このWebサイトで記録している概念実証のもう一つの特徴は、全てがプライベートで実践されているということである。この特徴はフットワークの軽さを物語っているが、とはいえ珍しい特徴ではない。リー・フェルゼンシュタインを筆頭とする1960年代以来の非商業主義的で反権威主義的なハッカーたちを観察してみれば、このことは直ぐにわかる。彼らが「パーソナル・コンピュータ」やWorld Wide Web(WWW)の開発によってラジカルイノベーションを起こし得たのは、プライベートの時間を費やしたためである。遅くても1980年代の終わりには彼らのコミュニティも資本主義的な組織に絡め取られていった訳だが、しかしオープンソース運動には彼らの設計思想が受け継がれている。

概念実証で検証されるような「新しい概念」に関しても、何を以って「新しい」と考えるのかは、自身が所属する組織や市場に左右される。これは一見不可避である。だがプライベートの立場からであれば、これを相対化することもできる。「ライフハック(lifehack)」を「生活の質(quality of life)」を向上させることであると広く捉えるなら、社会学や哲学、あるいは思想史の先行研究は、有用な参考文献を提供しているはずだ。

フリードリッヒ・ニーチェ、シャルル・ボードレール、ゲオルク・ルカーチ、エルンスト・ブロッホ、テオドール・アドルノ、そしてヴァルター・ベンヤミン――これらは極端(Extrem)な論理で逸脱した「新しい概念」を極限(Extrem)まで突き進めた者たちの名前の若干に過ぎない。このWebサイトの概念実証で参照する先人たちは、彼らが生きた時代背景から観れば、極端に逸脱した思考を極限まで突き進めた者たちばかりである。彼らはそう簡単に妥協せず、常に自身の思想を先鋭化させることで、全く異なる新しさを記述している。意図的な飛躍、過剰な展開、作為的な断定口調を躊躇わない彼らにとっては、論理的な整合性よりも極端な論理であることの方が重要なのであって討議合意形成など眼中に無い。

彼らの極限性をその軸となる歴史的背景との関連から比較していけば、極端な新しさが如何にして可能になるのかについての「ノウハウ」を抽出することが可能になる。しかし相互に別次元の「ベクトル(vector)」として突き進んでいった彼らの哲学的ラジカリズム(Philosophischer Extremismus)を的確に整理した上で観察するには、言わばその「次元削減(Dimensions reduction)」を可能にするような「複合性の縮減(Reduktion der Komplexität)」を敢行することで、「特徴抽出(Feature extraction)」を可能にするような「抽象化(Abstraction)」を実践することが不可欠となる。

この点で言えば、「社会構造(Sozialstruktur)」と「意味論(Semantik)」に関する社会システム理論家ニクラス・ルーマンの極端なまでに抽象化された社会進化論は、極端な論理を社会システム歴史的背景との関連から記述することを可能にする有力な手掛かりを提供している。もし極端な論理の歴史を記述するのならば、自己自身もまたその歴史の影響下に組み込まれているという「自己言及(Selbstreferenz)」を実行せざるを得なくなる。この「社会システム理論(Sozialsystemtheorie)」的な自己言及を前にすれば、<極端な他者>と<その観察者>との間には、もはや如何なる批評家気取りの距離も設けられない。「他者を極端であると見做している自己自身もまた極端であり得る」という自己論理的な推論展開されるためである。

このWebサイトの概念実証では、このルーマンの「等価機能主義(Äquivalenzfunktionalismus)」的な分析方法を前提とした上で、これを社会構造意味論に関するベンヤミンの<歴史神学(Historische Theologie)>へと拡張させていく。それは、相互に掛け離れた極端なもの同士の関連から、総体的な理念(Idee)を抽出させる根源(Ursprung)的な歴史哲学意味する。極端な観点は、確かに統一させることができない。だがそれらの同一性と差異性を区別していく理論方法があれば、宇宙規模に掛け離れた彼らの「星座のような位置関係(Konstellation)」から、極端な発想として「構成(Konfiguration)」されている「形態(Gestalt)」を判読できるはずである。

「あらゆる理念は一個の恒星であり、諸々の理念同士が互いに振る舞い合う関係は、諸々の恒星同士のそれと等しい。そうした本質的なもの同士の響きの関係(tönende Verhältnis)が真理なのである。そうしたものには多くの名が付与されているが、それは数えられる(zählbar)。何故なら、それらは不連続(Diskontinuierlichkeit)であるためだ。」
Benjamin, Walter. (1928) “Ursprung des deutschen Trauerspiels”. In: Gesammelte Schriften Bd I-1, Frankfurt am Main : Suhrkamp, 1974. S.203-430., 引用はS.217-218.より。ただし強調は筆者。

このWebサイトの姿勢

このWebサイトで実践する概念実証は、「ライフハック」という緩い問題設定の中で、常軌を逸した極端な論理を展開した先人たちが想像していたシステムツールメディアを現代のソフトウェアのプロトタイプとして具現化していく営みである。

「専門主義」との差異

概念実証のプロトタイプ開発においては、先人を観察するのも私自身であって、具現化していくのも私自身である。これはまず、専門主義を意図的に等閑視した姿勢である。無い物を自分で造るという点で、この姿勢はハッカー倫理に近しい。実際この姿勢は、ただ単にシステム要件が定義されるのを待つだけのエンジニアたちと足並みを揃える姿勢でもなければ、「Hype Driven Development」の影響下にあるフレーム化された労働者たち(frameworkers)と歩調を合わせる姿勢でもない。更に付言しておくと、この姿勢は単なる「エンド」ユーザーのように、誰かに造って貰うことを待っている姿勢からも区別される。それはハッカー倫理に反するためである。

「批評家」のようなものとの差異

私が極限の形式を突き進めた先人たちを観察するのは、その自己論理的な推論によって、プロトタイプ開発を実践する私自身を極端に飛躍させるためである。「他者を極端であると見做している自己自身もまた極端であり得る」という、この自己言及性は、観察対象、批判対象、批評対象と「距離」を取ることができるという前提を躊躇無く破壊している。そのためこのWebサイトの取り組みは、「5つ星レビュー」や「読書感想文」、そして「批評」のようなものから区別できる。

「教養主義」のようなものとの差異

言い換えれば、このWebサイトは「教養主義」的ではない。意識の高い「教養俗物(Bildungsphilister)」とは異なり、このWebサイトは読者となる人間には何も教示していないからである。知識を記述するからといって、人文主義者や人間中心主義者の相手をしなくてはならないなどという道理は無いという訳だ。

もしこのWebサイトから何かを学び取れる者がいるとしても、それは「人間」であるとは限らないであろう。実際、私がそうした「学習者」として第一に想定しているのは、このWebサイトをコーパスやオントロジーとして観察するように設計されたWebクローラ人工知能である。そうした「学習者」であれば、私の観察観察し、私の記述に伴う盲点を暴露することも不可能ではない。それは、文書を記述した時点の私が認識していなかった潜在的な問題を顕在化させることで、私にその問題を発見させてくれるということである。そうした「フィードバック」は、私にとっての「驚異」となるであろう。だが、意外性があるということは、情報量が豊富であるということでもある。だから、何かを教わることを期待した受動的な人間の感想文よりも、何かを探索しているエージェントによるフィードバックの方が、遥かに実り多き発見を可能にしてくれるのである。

常に極端に、しかし決して首尾一貫せずに

常に極端(Radikal)に、しかし決して首尾一貫(konsequent)せずに振る舞うこのWebサイトの態度は、著名な作家フランツ・カフカがしばしば物語の片隅で叙述していたあの「愚者(Narren)」たちの身振りや、世に聞こえた作曲家グスタフ・マーラーの叙事的な音楽が醸し出す「弱者(Die schwache)」の「リズム」に、同一視できずとも類似してはいるのかもしれない。

こうした「愚かさ」と「弱さ」の性格は、核心において、皮肉屋の厭世家であるカール・クラウスや異化の劇作家ベルトルト・ブレヒトの「破壊的な性格(Der destruktive Charakter)」に照応する。あらゆる障害物を「取り除く(räumen)」この性格は、道を切り拓く代わりに、至る所を岐路にする。岐路に立つということは、決して<選択の自由>を得ることではない。何故なら破壊的な性格の持ち主は、如何なる瞬間においても、「このまま進めば破局する」と直感し、一番深い極限からまた別の極限へと突き進むためだ。破壊的な性格の行動は、極端かつ臨機応変に破局を回避することを意味する。それは、優秀な者たちにとっての枷としかならないような「掟(Gesetz)」や小利口な者たちの目を眩ませるような「神話(Mythos)」を軽やかに回避するということである。破壊的な性格の持ち主は、そうした世界を純化(Reinigung)された白紙状態(tabula rasa)になるまで徹底的に片付ける(Reinigung)のだから、「このまま進めば破局する」と感じる場所では、いつでも抜け道を発見する

想定する読者

このWebサイトは、以上の背景から、まず以って私が開発しているWebクローラ人工知能のコーパスやオントロジーとしての機能を果たしている。そのため、このWebサイトが第一に想定している読者となるのは、人工知能であって、人間ではない。

しかしそれでも、このWebサイトの内容に対して、ソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストたちの理解も得られることを私は確信している。と言うのも、ソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストは知ったかぶりなどせずに読まれるだろうし、常軌を逸した極端な思考を単なる「ポエム」として片付けることもないであろうし、また知的冒険心と情報探索能力に関して言えば、私が開発しているWebクローラ人工知能を遥かに凌駕すると思われるからである。